桜とさくま

 

半年ぐらい前に書いて鍵垢にだけ載せたけどピンク色の髪の毛の佐久間くん見てこっちにも載せたくなった

成人の女が書いた黒歴史になるだろう物語

NEWSのさくらガールもとにしたやつ

 

 

学校の近くの桜の木が突然咲かなくなった高2の年の春、彼は転校してきた。
色白で、ほっぺと指先と髪の毛が綺麗な桜色の男の子。名前はさくまといった。
さくまくんは人懐っこくて、すぐにクラスのみんなと仲良くなった。
夏はみんなで一緒にプールに行ったり、秋はさくまくんが「読書の秋だ!」と大量の漫画を持ってきたり、冬はみんなとイルミネーションを見に行った。来年は受験だから見に来れないかな、なんて笑うさくまくんの横顔はどのイルミネーションよりも綺麗だった。

 

そして高校生になって3回目の春がきた。あそこの桜は今年も咲いていない。掃除のおじさんが、「なんでだろうねぇ、手入れは毎年変わらないんだけど」と言っているのを横目で見ながら教室に入った。
「おはよー!!!」
いつでも元気なさくまくんの声が響き渡る。
「今日も元気だね(笑)」
今日からまた、新学期が始まる。
その年はみんな受験勉強で、塾に通う頻度が高くなったり、模擬に行ったり、夏期講習に行ったり、バタバタしていた。
でもさくまくんは塾だから遊べないみたいな日はなく、毎日のように今日ひまなクラスメイトを誘っては遊んでいた。

「さくまくんはさぁ、大学どうするの?」
ある日の放課後、日直が被ったさくまくんと教室に二人っきりになった。
「んー、わかんね」
「なにそれ!もうそろそろ冬だよ、進路決めなきゃだよ」
「そうねー」
さくまくんは器用に折った紙飛行機を教室の隅に飛ばした。
きっと、ふれちゃダメなんだ。なんとなくそう思った私はあわてるように話をそらした。
「ね、さくまくんってあそこの桜が咲いてるの見たことある?」
教室の窓から見える大きな木を指さす。
「あるよ!何回も!」
曇っていたさくまくんの顔が晴れた気がした。
「えーいいな!私高校入った年にしか見たことないんだよね~。来年の卒業式の日は咲いてほしいなぁ」
「そうだねぇ。俺もまた見たい。咲いてても綺麗だけど、桜って散りゆくから綺麗なんだよ。」
「なにそれ知らなーい!またアニメかなんかのセリフなんでしょ」
「バレた?」
笑いながら言っていたけど、さくまくんの表情はどこか切なかった。

あっという間に月日は流れ、もう卒業式の前日。
みんな、新しい道に進む。
ただ、さくまくんだけは、これからどうするのか誰にも話していないようだった。
私とさくまくんは、みんなより仲良くなれたと思っていたから、少し寂しい。
「さくまぁ、桜咲かないね」
「明日卒業式だしまだ間に合うよ!!!」
この日も全力なさくまくんは、みんなを笑わせていた。
もう二度と、さくまくんに会えなくなるなんて思わなかったから。

 

卒業式の日。
いつも誰よりも早く来ているさくまくんの姿が無い。
「あれ?さくまくんは?」
「え?誰?」
「え...?さくまくん、髪がピンクの...」
「髪がピンク...?アニメキャラ?(笑)」
私はあわてて他のクラスメイトの子にも「さくまくんは?」と聞いてみる。
知らないとか、誰とか、まるで最初からいなかったみたいにみんなが口を揃えて言う。
どうして?昨日まで同じ教室にいたのに。
呆然と立ち尽くしていると学校のチャイムが鳴って、最後のHRが始まる。
さくまくんはまだいない。
最後の出欠の点呼も、さくまくんの名前は呼ばれない。
体育館に移動して、卒業式が始まる。
校長の最後のお話を聞いて、卒業証書を受け取って、最後の校歌を歌って。
教室に戻っても、さくまくんが現れることはなかった。
「じゃあ、みんな 元気で。」
先生の最後の挨拶が終わる。
登録していた番号に電話をかけても「この電話番号は只今使われておりません」と返ってくる。
どこにいるの、なんで突然消えたの、返事してよ、出てきてよ、さくまくん。

そのとき、開けていた窓から強い風が吹いて、桜の花びらが舞って入ってきた。まるで、「泣かないで、俺はここにいるよ」と言っているように。
外に出ると、あの何もなかった大きな木に、桜が咲いていた。